オチは無い
独り言私がそれを初めて見たときは、84にあった。
一週間ほどここに滞在し、ときおりぼんやりと眺めていたが、
それは82から86の間を、いったりきたりしているようである。
その動きも86まであがったかと思うと、82まで下がったり
82,83,84と順に上がってくると、83,86と下がったり飛んだりする。
不規則な動きの中に、なにか法則があるのかと観察していたが
優雅で緩慢な動きについつい目蓋が重くなり、しだいに観察を忘れ
居心地の良いソファーに身体を埋めていた。
事件が起きたのは滞在してから10日も過ぎようとしていた頃だろうか。
隣のイギリス人が私を大声で呼んでいるので、下へ降りていくと
イギリス人の他に数人があつまって、それを囲んでいた。
彼に即されてそれを見てみると、驚いたことに97にあるではないか。
「誰かが動かしたに違いない!」とイギリス人は興奮していたが、
動かすには、それはあまりにも巨大すぎる。
それに人為的にそれを97まで持っていくとなれば
五個や十個どころではない数の歯車を同時に動かさねばならない。
「犯人がいるとすれば、ヘカトンケイルだな」と私が言うと、
「タルタロスに落ちてしまえ!」と激怒した。冗談の通じない奴だ。
そもそもそれが、82から86の間にあると言うのは、
ここに滞在してから見ていた範囲での話あり、以前はもっと上の方か
下の方にあってもなんら不思議では無いはずだ。
この中で一番長く滞在しているバスク人に聞いてみると、
90より上にいったのは初めて見たと答えた。
法則に沿った動きなのか、あるいは誰かが意図的に操作したのか。
「君はそれをいつも眺めていたが、この動きは法則に沿ったものだと思うかね?」と
聞かれたので、86からは下がって行く事らいしか判らないと話すと、
イギリス人が「彼は協力する気が無いんだ」と、また興奮しはじめた。
「誰か85にあったのを見た人はいますか?」とバスク人が皆に聞いた。
そう言われてみれば私は85にあったところを見たことがない。
自分一人だけかと思っていたが、どうやらここにいる全員見た事が無いようである。
85を飛ばす理由があるのかもしれない。
それが判れば今97にある理由も動きの法則も見いだせるのではないだろうか?
私たちは、それをもう一度よく観察する事を決め、今日はこの場で解散することにした。
続きはWebで。(おぃ
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